森林と共に生きる

日光杉

craftsman:田村 文宏

area:栃木県日光市

text:原 百合子

栃木の山々に昔から生態する杉の木は、

日本古来の品種です。

伝承、、、。

栃木の風土に合った杉材は

住居の建材や木工細工に用いられてきました。

高級木材といえばヒノキが挙げられますが、

檜よりも堅牢でカビにくいため

杉材が暮らしを支えています。

プロダクトの始まり

リキュール製造者:原 百合子

工場:宇都宮市二荒町

私はバーボンウイスキーの樽の香りや味わいが好きで、自分のリキュールを置いてくれるBARに挨拶に行っても、バーボンハイボールを頼みがちです。

遡って2014年11月、バーボンファンとしてケンタッキー州の新樽製造工場を見学した時のこと。意外に感じたのは「製樽は伝統的だがエコではない」ということでした。

例えば、樽を固定するための鉄の輪の轟音、樽を焦がすための大きな火柱は、生命を脅かされるような衝撃でした。もちろんバーボンファンとして必要を待たなければならない工程であり、新樽の需要もまだまだあります。しかし自分が新規酒造をやろうという時には、樽熟成のようなやり方を追随するのではなく、全く新たな方向を探るべきだと感じました。そして実際に、アメリカの学生もまたそう考えていたのです。

私は帰国してからBARのお客さんとその会話をします。誰もが「樽に酒を寝かせるのとは逆に、紅茶のパックのように木の屑をお酒に寝かせれば良いのではないか」というアイデアに至ります。お客さんの検索でアメリカのクラウドファンディングにオークの木のスティックを焦がして販売実験している学生サークルがあると教わりました。早速輸入して、そのかなり焦げたオークのスティックをウォッカに浸すと、なかなか良い風味がしました。全く初めての試みで未知数でしたが、いける手応えでした。次に私はもっと手に入りやすくて、身近で国産の木で誇れるものはないかと探して、見当たったのが奈良県の吉野杉のスティックでした。日本酒を飲むときのマスは杉材ですが、日本酒に杉の香りを移して飲むためのスティックが売っていて、これもまたウォッカに浸すとなかなか良い香りがしました。さらに飽き足りない私は、ようやく自分の生きる栃木県の林業に目を向けるようになります。

タイミングを良くして2015年3月、木工の街鹿沼のツアーに参加しました。一般車の入れない粟野の山に深く入り、そこで杉の大木が1本丸ごと切り倒されるシーンを初めて体験します。その迫力、携わる熟練職人の技、収穫した杉材の尊さをひしひしブルブルと感じました。その技とは、人の手で大木の根元に力強く斧を入れ、重機で牽引して安全な方向へなぎ倒すという、まさにアナログで伝統的な木こりの姿でした。安全な方向に100%倒せるとは限らないので、命がけです。こうした人たちは、山の倒木を防いだり、土砂災害を防ぐための山の管理も行っている、山のプロです。

収穫した木は製材工場に運ばれて加工され、余った木片が燃やされます。そのときふと、製樽工場で見た光景やお客さんの言葉を思い出して、杉の端材を生かさなければと思ったのです。

バーボンはジムビームやメーカーズマークのようなビッグビジネスだけではなく、たった一人の製造者が先祖代々のブランドを継いでいる蒸溜所もあったりして、やはり起源は私の大好きなローカルビジネスなのです。

バーボンに改めて敬意を表したいのは、南北戦争や禁酒法の歴史を経て今があるということと、製法が無着色であり地域資源のコーンを活かしたということです。もしウイスキーに「麦由来でなければならない」というルールが早めに作られていたら、「コーンはダメ」と言われていたら、バーボンは行き場をなくしていたかもしれません(もちろん美味しさに変わりないし、むしろ「バーボン」という品目になっていたかもしれないけれど)。ですから、ルールとは本当につまらないもので、先に決まっている枠に入ろうなんて思わなくて良いのです。のびのび成り行き任せに。

私は大好きなバーボンを紐解いて、木の香りを楽しむことに着目し、そこから地元の林業を学ぶに至りました。私のような新規酒造は、従来の分野を辿るでなく、木のリキュールのような未確立な分野にチャレンジすべきです。現在、端材を提供してくださる田村木材店の田村社長から「ヒット筋の商品ではないだろうけど、栃木のリキュールなら日光杉は絶対に外せないよ」と、熱い応援をいただいています。

私もバーボンや地域への憧れが募って、作るのが楽しい商品です。

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