プロダクトの始まり
(株)栃木リキュール
リキュール製造者 原 百合子
栃木県那須烏山市には子供時代に自然にふれあった思い出がいくつもあります。夏の那珂川を泳いだり「ヤナ」で炭火焼きの鮎を食べたり、季節を感じました。
大人になってからは戦争の名残のある洞窟酒蔵や、ユネスコ無形文化遺産に登録された「山あげ祭り」など、烏山城下町ならではの文化を肌で感じました。
那須烏山市街から南東の山に入った国見地域は、ちょっとした異世界で、シンとした穏やかな静けさ、天国のようにさえずる鳥の声、綺麗な空気とそこに入り混じる圧倒的なみかんの香り、声が遠くまでこだまする山々、その斜面にみかん畑はあります。
国見には現在5つのみかん園があり、そのうち3軒は80代の農家さんが営んでいます。幼い頃にみかん園を訪ねた人が、今は孫と一緒に「親子三代で毎年楽しみにしている」と通い続ける場所です。
ここには毎年、地元の幼稚園の子供たちがみかん狩りに来るため、みかんの皮には農薬をかけないようにしています。それゆえ外皮がくすんでいることもありますが、人への思いやりは土壌にも影響して、国見みかんは健やかな森の一部として育まれています。50年の間、柚子や森と共に育った国見みかんは、特別に爽やかな香りを持っています。国見の土地とみかん農家さんが育んだ宝物です。
みかん狩りのお客様のためにも、みかんはいつも木になっていなければいけません。那須烏山市のNPO法人クロスアクションの高橋さんが、農家さんにみかんの生育状況と収穫のタイミングを確認して、収穫に良い日の情報を教えてくれました。本当に、こうして地域に細やかな目を向けて愛する人がいるので、この国見は美しいのだと思います。
私は加工の際に、みかんを軽く磨いて切って、皮を乾かすところから始めます。この時ばかりは全製造を停止して、製造室の温度を上げて湿度をカラカラにして、みかんの皮を乾燥させます。高い位置に並べた皮が乾いたら布袋に入れて、低い位置の皮をまた高い位置へ移動させます。果肉は全てジューサーにかけて、お世話になった方々へ配布します。旬のみかんジュースは風邪予防になるに違いありません。
私たちがみかんを食べるときは、皮をむいて香りを感じ、房を食べて甘味や酸味を感じています。みかんの印象は皮の香りで決まるので、実は房だけ手渡されて食べても、みかん本来の良さは伝わりにくいのです。
私はこのパズルのようなみかんの皮がとても好きです。国見みかんの持つ森の香りが皮のオイルに凝縮されて、一番国見らしいと思うのです。実のままでは2カ月ほどで固くなってしまいますが、リキュールにすることで1年じゅう、国見の魅力に出会えるようになります。
少しでも多くの方に、リキュールを通して国見の風景を味わっていただきたいです。
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